妻木芳人オリジナルBL漫画サイト「DANCE HALL」

「占い」

イラスト「占い」

(Sideルース)――…黒猫には気をつけられよ。 「何だったんだ…あの占い師」 急に大きな声で呼び止められたと思ったら、「黒猫に気をつけろ」だなんて…。 水晶に黒いマント…いかにも胡散臭い感じがしたので、僕はそそくさとその場を立ち去った。 占いなんて信じていないが、あんなことを言われるとやはり意識してしまう。 「ニャー」 「…!」 目の前を黒猫が通った。驚くようなことじゃない、こんなのよくある光景じゃないか。 自分にそう言い聞かせながらレイの家へと急いだ。 今晩は知人から良いお酒をもらったので、レイと一緒に飲む予定だ。 リンゴーン――… 「どうぞ、旦那様はお部屋でお待ちですよ」 マリアさんが部屋まで案内してくれた。 廊下を歩いているとき、酒瓶を持っていることに気付いた彼女は少しばつが悪そうな顔をしながらこんなことを言った。 「…あー…旦那様にはあまりお酒を飲ませない方がよろしいかと。ルースさんのためにも…」 「え…?」 どういう意味だろう?マリアさんの言葉の意味を考えながら歩いているとすぐにレイの部屋へたどり着いた。 中にはガウンを着てソファでくつろぐレイがいた。 「やぁ、いらっしゃい。それかい?噂のうまい酒というのは」 「えぇ、知人から毎年もらうんですよ」 話しながら酒瓶をテーブルに置く。 「リミットはコップ3杯ぐらいまでです…」 マリアさんはそう耳打ちすると部屋から出て行った。 一体何を言っているのか理解できないまま、僕はレイとお酒を飲み始めた。 そういえば彼とお酒を酌み交わすのはこれが初めてだ。一杯二杯三杯… 二人で他愛もない話をしながら飲む酒は格別でどんどん進む。 自分もさることながら、段々とレイの頬が赤くなっていくのがわかった。 色っぽい――…少し汗ばんだ胸元、上気した頬…深いグリーンの目がけだるそうに僕を見つめてくる。 「ルース君――…」 そうつぶやくとレイはぐっと顔を近づけてきた。 唇を重ねようと彼の頬をつかんだ瞬間、思いがけない言葉が聞こえた。 「歌って」 「…?」 「ねこふんじゃった歌って!」 ―――…朝になって、ようやくマリアさんの言葉の意味が理解できた。レイは…レイは…酒癖が激しく悪い!! 僕は酔っぱらったレイに朝までエンドレスリピートでねこふんじゃったを歌わされた。 喉は痛いし、眠いし、黒の紳士のイメージをまた壊されてショックだし…もう本当に散々だ。 「スースー…」 「はぁ…占いも侮れないな…」 遠くで猫の鳴き声が聞こえた気がした。