妻木芳人オリジナルBL漫画サイト「DANCE HALL」

「マニキュア」

イラスト「マニキュア」

(Sideルース)「これだ!ルース君来たまえ」 大きな屋敷の地下にレイの声が響く。 そこは書庫というよりまるで図書館。 怪盗という仕事柄、普通の家の書庫とは比べ物にならないほど ミラー邸のそれは大きかった。 レイは膨大な資料の中から次の獲物の資料を見つけ出し、僕を呼んだ。 「これがパープルストーンですか…」 資料には挿絵が掲載されていた。 レイは挿絵の隣に書かれた文章を熱心に読んでいる。 「どうやら初代の持ち主だった宝石細工工が特殊な細工を施したようだな。 独特の輝きはそのせいらしい」 文章を指さしながら言う。 「…」 が、僕は彼の言葉よりもその指先の美しさに気を取られて、黙ってしまった。 色白で細長い指先には黒のマニキュアが好んで塗られており、それが一層色っぽく感じられる。 無意識に僕はその指先に触れていた。 「…どうしたんだい?」「あ…」 見惚れていた…とは言いたくない。からかわれるのが目に見えている。 「これは…自分で塗っているんですか?」 僕は平静を装って適当な質問をした。 「あぁマニキュアかい?そうだよ」 器用だなと感心した。利き手で塗るならまだしも、そうでない手で塗ったであろう5本の指も含め、 全ての指が塗りムラなど一切なく、完璧に美しい。 「…子供の頃、母の手が大好きだった」 ふいにレイが話し始める。 「いつも綺麗な色のマニキュアが塗られていて… それがすごく羨ましかったんだ」 綺麗なものの話をするとき、彼はいつも幸せそうだ。 けれど、今日は少し切ない表情にも見える。 「…周りからは男のくせにってよく言われるけどね」 なるほど。確かに考えてみればそうだ。 レイのセンスはかなり特殊で、一般的な男性の感覚とはかけ離れている。 キラキラした宝石や洋服、マニキュア… そんなものを好む彼を「変だ」と軽蔑する輩が少なからずいたのかもしれない。 僕は胸が締め付けられるような思いがして、思わずレイの指先にキスをした。 「すごく綺麗ですよ…あなたによく似合う」 顔がわずかに赤くなったかと思うと、レイは小さな声で何かつぶやき、僕の頬を優しくなでた。 「(君は本当に王子様なのか――…?)」