妻木芳人オリジナルBL漫画サイト「DANCE HALL」

「記念日」

イラスト「記念日」

(Sideレイ)眠れない…今夜はどうしようもなく誰かに犯されたい気分だ――… リーンゴーン。 「はい、どちら様で――…」 「やぁ」 「…レイ!」 玄関に出てきた彼は驚いた顔で私を見た。 それもそのはず。今日は特に約束などもしていなかったし、 私から彼の家を訪ねることは稀だ。 とにかくこの体の火照りをどうにかしてほしくて、突然やってきてしまった。 「びっくりした…あなたから来てくれるなんて」 「あぁ…今夜はなんだか眠れなくてね――…一緒に寝てもいいかい?」 「…もちろんですよ!――…嬉しいな、てっきり忘れられてると思ってたんですけど…覚えていてくれたんですね」 「…え?」 「――…僕なんか実はケーキなんか用意しちゃって…へへ…記念日を気にするなんて女々しいかなと思って言い出せなかっ たんですけど…」 「あ…あぁ…もちろん覚えているさ!今日は大切な日だからね」 ――…一体何の日だ?あれこれと記念日を思い出してみるが、全くわからない。しかしここで「わからない」と 言ってすねられても困る。だって今夜はどうしてもめちゃくちゃにしてほしいんだもの。 私は適当に話を合わせてその場をやりすごした。 ――ルースの部屋…メイドも雇っていないのにいつも綺麗に整理整頓されている。彼はまめな男で家事全般すごく得意だ。 「ルース君――…」 私は部屋に入るなりルースをベッドに押し倒した。もうとっくに我慢の限界、早く気持ち良くなりたくて仕方がない。 「ま…待って!あの…せっかくなので、ケーキでお祝いしませんか?」 そう言い出したかと思うと、彼はさっと部屋を抜けて小さ目のホールケーキを持ってきた。 (よくわからない記念日のお祝いなんかより、さっさとヤりたいのだが…)そう思いつつも彼の機嫌をそこねぬよう、 私はお祝いに付き合うことにした。 1、2、3、4、5…ケーキにはロウソクが20本程立てられている。何だろう…誰かの誕生日?いや、20歳の知り合い なんかいないし、私も彼も当然そんなに若くはない。結局何も思い当たらず、私はとにかく早くケーキを食べてやりすごそ うと考えた。 「あのときも――…」 ルースはケーキを食べながら懐かしそうな顔で話し出した。 「あなたは警察に追われていた…すっごく急いでいて――…いったい何を盗んでいたんですか?」 「――…」 「レイ…?」 まずい。警察に追われていることなんてしょっちゅうじゃないか。何を盗んでいたかと言われたって――…。 「確か…そう、宝石箱だよ!」 「え…宝石箱ですか…?あそこの美術館は絵しか飾ってなかったんじゃ――…」 「…」 「あの…レイ、本当に今日が何の日かわかってます?」 「…――(ギクッ)」 ルースは怪訝そうな顔で私を見た。そして大きくため息をつくと、続けてこう言った。 「出会った日ですよ、僕とあなたが――…」 …そうか!やっとわかった。ちょうど20年前の今日、私達は初めて出会ったのだった。しかし出会った日まで記念日 としてお祝いしようだなんて…やっぱり彼はかなり夢見る少女だ。 「あぁ、そうそう、そうだったね!」 「やっぱり覚えてなかったんじゃないですか…」 あ。バレちゃった。ルースは予想通り、少し不機嫌そうな表情をしている。 「…ほら、今日は眠れなかったって言ったろ?きっと無意識のうちに君を求めていたのさ。だって今日は大切な記念日だから」 「またそんな都合のいいことばかり言って――…」 これ以上何か言われたらたまらない。私は彼の口を塞いで言葉を遮った――。