妻木芳人オリジナルBL漫画サイト「DANCE HALL」

「秘密の小部屋」

イラスト「秘密の小部屋」

(Sideレイ)「紅茶をお持ちしますから、少し座って待っていて下さい」 次に狙う獲物が決まったので作戦会議をしようと、ルースの屋敷にやってきた。家政婦を雇っていないため、彼自ら紅茶を用意しに行く。 私はどうもじっと待つのが苦手で、部屋の中をうろうろしたり、外の景色を眺めたりしていた。この屋敷に住んだことこそないが、やはり自分の所有物。 どこにどんな部屋があるかぐらいは把握している。確かこの応接室の隣には、小さ目の…しかしとても綺麗な部屋があったはず。 子供の頃はその綺麗な小部屋がお気に入りで、よくこっそり読書をしに来たものだった。 「あの部屋…どうなってるかな…?」少し懐かしい気持ちになり、部屋を見回す。あった。こげ茶色のアンティークドアがわずかに開いていた。 私はワクワクしながら、小部屋につながるそのドアを開いた。「だめですそこは…!」ふいに後方からルースの声が聞こえた。 …が、もう遅い。私はひきつる顔をどうにもできずに「ルース君…何だこれは…!」と尋ねた。私の反応も当然だ。 なぜならそこには黒の紳士のフィギュアやらポスターやらが所狭しと飾ってあったのだから…! 「だからだめだって言ったのに…」ルースはばつが悪そうにつぶやいた。彼が黒の紳士の大ファンだということは重々承知していたが、 まさかグッズまで集めていたとは…。一瞬引いてしまったが、趣味は人それぞれ。私がとやかく言うことでもない。 「あ、これ腕が動くぞ。ふーん、よくできているんだな、最近のおもちゃは…」私はフィギュアを手に取っていろんな角度から眺めたり、触ったりしてみた。まさか自分をモデルにしたフィギュアを間近で見る機会があろうとは…。 「あまり触らないで下さいよ…ポーズとか並べる順番とか…いろいろあるんですから…」ルースが少し困った表情で言ったかと思うと、今度は一転青ざめた表情に変わった。 「ん?」手元を見ると人形の首が取れている。そうか、これは動かないタイプの人形だったのか。「…ななななんてことするんですか~!!あぁぁ…早く治さないと…!」 ルースの動揺っぷりたるや尋常ではない。「…いやーすまないね。動くのかと思ったら違ったようだ」 「…もうっ…このポーズをしているのはレアなんですよ!?しかも人ん家勝手にあさったあげく、物を壊すなんて…ありえない!!」 私は正直カチンときた。あやまったのにこの言われよう…!大事な客人をほったらかして、人形の修復作業をし始めた態度も気に食わない! 「…君は本物よりそのおもちゃの方がいいんだな!」 何だかとても悔しくて、私は捨て台詞を吐いて去ろうとした。が、それはすぐに阻まれた。重い大型犬が後ろから抱きついてきたからだ。 「…そりゃ…本物の方がいいに決まってるじゃないですか…」後ろを見ると怒っているのか照れているのか複雑な表情をしたルースがいた。彼のこういうところをつい可愛いと思ってしまう自分に呆れる。「はぁ…甘いな、私も…」帰っちゃやだと言わんばかりの表情を浮かべる目の前の男を抱き寄せて独り言をつぶやいた。